彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.10

SALLY

性別や年齢を問わず上達できる
マシン操作に魅了され
50代半ばでモータースポーツの
世界へ飛び込む

SALLY

愛車を通して出合ったレースで
趣味の枠を超えて本域モードに


「私はアウディに長く乗っていることもあって、2019年にディーラー主催の走行イベントに参加したんです。それはインストラクターの先導のもと、富士スピードウェイのショートコースを走るものだったんですが、全然ついていけなくて。え? 私そんなに運転が下手だって思ってなかったんだけどって、我ながら驚いてしまって。そこから火がつきました。」


一度着火したら、もう止まらない。レースにおいて全くの素人ながら、イベントレベルではすぐに満足できなくなり、2020年、アウディ A1 Fun Cupにフル参戦。50代半ばの挑戦だった。外資系物流ソリューション企業の日本法人代表という顔を持ち、決断力と行動力が人並み以上。そんなSALLY選手にとって年齢など便宜上の数字に過ぎず、挑戦は常に身近にあるものだっだ。


「幼少期から青春時代はフィギュアスケートに打ち込みました。大学時代はウインドサーフィンに没頭して、30歳半ばでサーフィンにハマって。都内から千葉の海まで通うのが面倒なので、40代でサーフィンポイントの目の前に移住しました。ウエットスーツを着てマンションのエレベーターを降りたら、道路を渡れば目の前は海。全然上手くならないけど、楽しいです(笑)


くしゃっと微笑んだ目尻に、経験を積んだ大人の女性ならではのしなやかさがにじみ出る。ベースにあるのは飽くなき好奇心なのだろう。そして尽きることのないチャレンジ精神が、最強のモチベーションのようだ。





制御装備無しのVITAに惹かれ
日本で唯一の女性だけのレースに参戦




アウディのA1 Fun Cup出場後にレースを小休止しているタイミングで、SALLY選手はVITA-01(以下、VITA)というマシンと出合う。


「安全でシンプルなのに加えて、制御装備のないこの本格的なレーシングカーにすっかり魅了されました。維持費用もアウディのレースでかかった費用と比べてローコストだったのも大きいです。気に入って中古のマシンを購入しましたが、KYOJO CUPのオーディションを受けても別に何も起こらなくて(笑)。 年齢的にも技術レベル的にも及第点ではなかったんでしょうね。それで自分でやるしかなくて、チームを探して入りました。」


大人の道楽なのだろうと誤解を受けそうだが、決してそうではない。


「モータースポーツって、競技をする上でマシン操作のパーセンテージが大きく占めているんですよね。それをどう操るかが肝心で、老若男女の差があまりないじゃないですか。サーフィンにしてもフィギュアスケートにしても私が取り組んできたスポーツはどれも身体を使うものなので、やはり性差や年齢差がすごく影響してくるんです。レースに参加するようになってから、レースは体力差や年齢差よりメンタルに作用されるスポーツだとわかって。メンタルが弱い私としては、レースを通してその弱点を強くしたいという思いもあるんです。」


SALLY選手にとってレースへの挑戦は、「まず、同年代より若さが保てる」とキッパリ。端々にユーモアが感じられる解答に乗じて、小さい頃からカートで鍛えてきた10代、20代の選手たちについてどう思っているのかを尋ねてみると、「付いていくぞ!上手くなるぞ!そのうち見てろよ!みたいな(笑)」との答えが返ってきた。



大人の特権を駆使して
自分流にモータースポーツを楽しむ




自身のVITA-01のラッピングやレーシングスーツに、役員を務める企業ロゴを搭載した。


「アメリカにある本社の社長がこういったプロモーション活動に興味を示してくれ、レース出場の際はスポンサードしてもらっています。社外での活動に対する理解度は外資系企業ならではなのかもしれませんが、私自身、会社で一番の実績を出しているという自負がありますので、その信用度も大事ですよね。」


あるときはウエットスーツに身を包み、またあるときはレーシングスーツをまとい、商談ではビジネススーツをクールに着こなすSALLY選手。どのシーンでも手を抜かず、全力で挑んでいるのだろう。2024年度は、以前、翁長実希選手にコーチングをしてもらったことがご縁で翁長選手と同じRSSレーシングチームに所属してレースに臨む。


KYOJOはプロのGTドライバーになりたいという選手もいれば、私みたいなド初心者でも参加させてもらえる幅の広さが魅力ですよね。強いチームに入れてもらえたので、上手くなって支えてくれるチームのためにも結果を出したいです。還暦記念ということで(笑)


可能性は無限大。SALLY選手は年齢の概念はもとより何ものにも縛られず、さまざまなVITAレースでそのポテンシャルを発揮していく。