INTERVIEW
Vol.12
髙野理加
先生であり整備士でもある
レーシングドライバー
モータースポーツ業界を目指す
学生の架け橋に
INTERVIEW
Vol.12
先生であり整備士でもある
レーシングドライバー
モータースポーツ業界を目指す
学生の架け橋に
髙野理加選手(以下、理加選手)は1級整備士の資格を持つ女性レーシングドライバー。自動車好きが高じて整備士資格を取っただけでなく、現在、整備士を育成する専門学校で講師としても活動中だ。テレビで放映されていたFIを見て、徐々にレースの世界に惹かれていったという。
「夫婦揃って走行会に走りに行くくらい両親ともに車好きな家庭で育って、車に興味を持つのは自然な流れだったと思います。中学生の頃はまだ地上波でF1やGTのレース番組が放送されていて、眺めているうちにカッコいいなぁと影響を受けていった感じです。」
それでもレーシングドライバーへの道が見えていたわけではなかった。「将来は自動車に関わる仕事がしたい」と、高校卒業後はトヨタ自動車の直営校であるトヨタ東京自動車大学校に進学。エンジニアとして実践的な技術を身につけようと4年制の1級自動車科に入った。普通自動車免許を取得したのも18歳になってからだ。初めての愛車に選んだのは、スポーツカーとして人気を集めながら2002年に生産を終了した日産シルビアだった。
「シルビアで走る喜びを体感したことで、レースに挑戦してみたい気持ちが膨らんでいきました。ですが、シルビアで出場できるレースはなくて。たまたま周りにロードスターカップ(以下、RSC)に出場されている方がいて、じゃあ私もとマツダロードスターに乗り換えて、それからRSCに参戦しました。」
もっとも、初レースは自動車の運転免許があればレース未経験者でも参加できるジムカーナだったという理加選手。2020年にトヨタ・モータースポーツクラブ(以下、TMSC)が主催したTMSC富士ジムカーナシリーズに出場し、開幕戦で勝利を決めるなど手応えあるレースとなった。
レースを開始した2020年、理加選手は母校のトヨタ東京自動車大学校に講師として舞い戻った。1954年に発足した歴史ある学校で、専門的な知識や技術が身につくだけでなく、9割以上がトヨタ系企業に就職できるとあって学生たちの意識の高さにも定評がある。
「受け持ちの教科は年単位で変わるので、これと決まってはいませんが、今は国家2級整備士受験に向けた授業を行なっています。担任としてクラスの運営にも携わっていて、こうしたレースウイークは副担任の先生に助けてもらいながら参戦させていただいています。」
大手自動車メーカーが運営する教育機関ということも大きいが、レーシングドライバーを志す若き講師にとって、恵まれた職場環境なのも確かなようだ。
「生徒たちも、私がKYOJO CUPをはじめとしたレースに出ていることを知ってくれています。レースでの経験を授業に活かすことも多々あって。例えば車の構造を教えるとき、レースの場面ではどう機能していて、突き詰めるとどう動くといった具合に伝えたりします。モータースポーツに興味がある生徒からは、自分の車の整備の仕方について質問されることもあります。私もマツダロードスターを自分で整備しているので、私の場合はどのようにセッティングしているとか、こんな壊れ方をしたときどんな風に対処したとか、アドバイスをしています。」
レースの中で1級整備士の視点で感じたことが、生徒にとっての良き学びに。理加選手は自身のレース活動を通して、若い世代が車に対して違った角度からも興味関心を抱いてもらえればと考える。
「2021年度からKYOJO CUPに参戦していますが、2023年度の2戦目くらいから徐々に中盤あたりに上がってきて、ようやくシングルを取れるようになってきました。エントリーしている他の選手もそれぞれに経験を積んでこられていて、毎戦、みなさんから学ばせてもらっている感じです。」
学校では教える立場だが、KYOJO CUPでは学ぶことばかりだと、理加選手は続けた。マイペースで本質的には争いごとが苦手だそうだが、「やるからにはしっかりバトルしないと。」と闘志を奮い立たせる。
「今はYouTube動画でレースの一部始終が確認できるので、そういうのを見ながら自分自身のレースを振り返っています。全然できてないなとか、もっとこうしたらいいんだとか。ドライバーズシートに乗っている感覚と外から見た感じとでは全然見え方が違うので、気づきが多いですね。」
先生であり整備士である女性レーシングドライバーは他にはいない。理加選手は自分ならではの多面的な視点を持ち味に、これからも進化し続ける。