彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.23

前田琴未

N-ONEオーナーズカップから
KYOJO CUPへ
「上手くなりたい」その一心で
がむしゃらにレースに挑む

前田琴未

カートデビューは21歳
N-ONEカップで本気モードに



現在、カーディーラーに勤める前田琴未選手(以下、琴未選手)が普通自動車免許を取得したのは21歳のとき。そこからカートに乗り始め、趣味としてサーキットを走るようになった。


「父が整備士をしていて、若い頃はバイクで筑波選手権に出場したり四輪でもジムカーナに参戦していたことも。そんな父の影響で幼い頃からバイクやクルマが大好きでした。カートも父に誘われて乗ってみたんです。最初に乗ったのがN35というよくあるレンタルカートで、全然面白さがわからなくて。もう二度と乗らないと思っていたら、父が『もっと速いカートに乗りに行こう』って。」


そこで琴未選手は100CCのエンジンを搭載したカートKT100を体験。車重も軽く、スピード感が全然違った。


「KT100は入門編的なレーシングカートですが、時速90〜100kmほど出るんです。初めて乗ったN35のようなハンドルの重さもなく、私のこうしたい!あぁしたい!に素直に反応してくれるマシンだなと。自分の思い通りに動かせるというところに面白さを感じて、徐々にハマっていきました。」


だが、琴未選手のレースデビューはカートではなくN-ONEオーナーズカップだった。これはホンダの軽自動車N-ONEによるナンバー付きのワンメイクレースで、参加者の多くはレースビギナー。琴未選手は勤務先の関係で、2018年、ツインリンクもてぎ(現モビリティリゾートもてぎ)で行われたこのレースに参戦することになった。


「上司の推薦で出場させていただいてがんばって完走したんですけど、車を壊してしまってチームに迷惑をかけてしまって。それが悔しくてもっと上手になるには練習しかないと。そこからレースに対してスイッチが入りました。」




技術力アップに意欲を燃やし
カート場に通って地道に練習





奮起した琴未選手はホンダ シビックを購入。サーキットで走行練習する他、カート場へも積極的に通った。


「とにかくたくさん回数を乗るしかないと、会社が休みの日は茨城県にあるイタコモータースポーツまでカートに乗りに行きました。仕事柄、平日休みなのでサーキットは空いているため抜群の練習環境で。N-ONEにもまた出たいし、上手くなりたい。その一心で走っていましたね。」


練習に没頭するほどカートが面白くなり、琴未選手は実力試しにカートレースに挑戦し始める。そして2022年、イタコモータースポーツのWEEKDAY CUPにスーパーエンジョイクラスで参戦すると、決勝で1位を取るまでに成長。同年のシリーズチャンピオンも獲得し、実力と経験を積み上げていった。そして2023年、満を辞してN-ONEオーナーズカップに舞い戻った。


「会社が2020〜2022年のコロナ禍の間、出場を休止していたN-ONEオーナーズカップに再び参加するということで、ドライバーとして出場する機会を得ました。正直、まだ実力不足ではありましたが、レースに出るたびそれまでできなかったことができるようになっていたので、自分がどれくらい上手くなったかを試すチャンスだと思いました。」


2023年は3度出場し、最高位は決勝16位/30台と健闘。納得のいく結果が得られなかった分、琴未選手の中で「上手くなりたい」意欲はさらに増していった。




いつか出てみたかったKYOJO CUP
まずはVITAと仲良くなりたい





2023年秋、そんな琴未選手にKYOJO CUPのオーディションの話が巡ってきた。


「N-ONEでお世話になった人に『女性だけのレースのオーディションがある』と教えていただいて。応募するか迷っていたら『モータースポーツ界はまだ女の子が少ないから、自分の存在を知ってもらうだけでもいいんじゃない?』と背中を押してくださったんです。それで12月のオーディションを受けました。」


このときは残念ながら合格を逃したが、参加チャンスはすぐに琴未選手を追ってきた。

「オーディション会場で、スーパーGTで活躍中の現役レーシングドライバー・川合孝汰さんにお会いして。川合さんが『年明けに僕が監督を務めているチームのオーディションをやるから、よかったらおいでよ』とお声をかけてくださったんです。それが、今所属しているハイスピードエトワールR VITAでした。」


ハイスピードエトワールR VITAは、カーレースを題材としたテレビアニメ『HIGH SPEED Etoile』(2024年4月〜毎日放送等で放映中)とコラボし、2024年4月に発足したばかりのチームだ。こうして琴未選手の目の前に、KYOJO CUPという新たな舞台が用意された。


「まずはVITAと上手く付き合っていくのが課題です。どれだけ上達していけるかを楽しみつつ、表彰台に登れたらと思います。」