彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.27

藤島知子

レース歴20年。
レース人生で今が一番本気です!
大人女子として見守る役と
がんばる自分の二つの顔で臨む

藤島知子

モータージャーナリストの視点と
レースでの感度が相乗効果に




KYOJO CUPで使われているVITAはアナログな車で。現代の車はドライバーの操作をフォローする制御が入るんですが、VITAはトラクションコントロールもなくて、唯一、電子制御のスロットルがあるくらい。ごまかしが効かない車なので、ドライバーが基礎を学ぶ上ではものすごく勉強になるんです。」


普段はモータージャーナリストとして活動している藤島知子選手(以下、知子選手)。軽自動車からスーパーカーまでを試乗して記事を書くことを生業としているだけに、VITAについての造詣も深い。


KYOJOでは私はベテランのほうなので、どちらかというと頭でっかちにいろいろ考えちゃうんです。でも初めてVITAに乗る若い選手たちは感覚的に体で覚えて、先入観なしにいける強さがあるんですよね。」


落ち着いた口調からも感じられる、知子選手のキャリアの厚み。レースデビューは2002年のことだ。

「短大を出てフリーターをやっていた頃です。当時、マニュアル車のマツダ RX-7に乗っていたんですが、その車が周りの人を引き寄せてくれてレースクイーンをやる機会に恵まれたんです。2001年はスーパー耐久レースに帯同させていただきました。そんなとき、自動車雑誌でレースにチャレンジする企画に出てみないかというお話があり、ライセンスを取得して翌年にはレースに出るという暴挙に出ました(笑)。同時に体験記を書くお仕事をいただいて、現在の仕事につながっています。」



男性中心のモータースポーツ界で
衝撃だった女性だけのレースの誕生





知子選手は、2002年からスズキ ワンメイクシリーズ Kei Sport Cupにシリーズ参戦し、毎年ステップアップしながらフォーミュラ SUZUKI 隼シリーズにも挑戦した。2007年からはマツダ ロードスター パーティーレースに参戦するなど、どんどん腕を上げていった。

「私が経験してきたレースでは、30台の中に女性レーサーは2台くらい。それくらい女性の比率は少ないものでした。そうした中でイコールコンディションで女性だけが競い合うレースが誕生すると聞いたときは、『待ってました!』という感じでしたね。まさかそんなレースができるとは思ってもみなかったので。」


KYOJOのオーガナイザーである関谷正徳さんが創った、女性レーシングドライバーが活躍できる道筋。知子選手のようなキャリアを積んだ選手が衝撃を受けたほど、モータースポーツ界にとってセンセーショナルな出来事だった。


「初年度から参戦させていただいていますが、女性だけと区切ったことで男女混戦より普段以上に闘争心が芽生えるレースが繰り広げられている気がします。もちろん、マシンを降りれば良いコミュニケーションがとれていて、それも女性同士ならではですよね。横のつながりも大切にしつつ、良い意味でのライバル視もしながら、誰もが自分を高めているように感じています。そうした雰囲気も含め、KYOJO CUPはとても面白いカテゴリーですね。」


女性同士で戦ってみて初めてわかったことがたくさんあると、知子選手。自身が参戦する立場にありながら、全体を俯瞰で見る目を忘れないのはモータージャーナリストとしての矜持でもある。




通算8年目となるKYOJO参戦
回を重ねるごとにレースに魅せられて





2024年、8年目となる参戦が実現した。


「やはり応援してくれる人がいないとダメですし、何よりチームが乗せないと決断したら別のチームを探さなければいけません。ですから、私たち選手はグリッドにマシンを並べられること自体が一つのハードルなんですよね。そういう意味で本当にチームに感謝していますし、乗せてもらうからには日々前を向いている自分がいないと、タイムに出てしまいますから。」


謙虚さの中に秘めた熱い闘志。緊張感は常に知子選手につきまとう。


「レース当日は、以前だったたらサーキットへ来てから頭の中でシミュレーションしていたんですが、今は事前にやるべきことは頭の中で整理して臨まないとマシンに乗れない感じですね。マシンのコンディションはどうか、当日の路面コンディションはどうか、前回の失敗をどう克服してタイムアップするか。経験を積み重ねて自分の中で蓄積されたデータを基に、考察しています。」


考えて走らなければトップは目指せないーーベテラン選手だからこそ、見えてくるフェーズがある。


「サーキットで体験したことを発信していくのが私の役割ですから、これからもそこはちゃんと伝えていきたいところです。女性同士で競い合えるシーンて、やっぱりすごく面白くて。私、レース人生で今が一番本気になっています。KYOJOを大人女子として見守りつつ、もう一人の私はカッコよく走れる女性を目指します。」