彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.28

織戸茉彩

モータースポーツや車に
馴染みのない人たちにも
レースの楽しさ
カッコよさを伝えていきたい

織戸茉彩

著名レーサーのDNAを受け継ぎ
チームの力を糧にレースに挑む



織戸茉彩――モータースポーツファンならば、その名を聞いてピンとくる人も多いだろう。茉彩選手は、スーパーGT等で活躍するベテランドライバーの“MAX織戸こと、織戸学選手の次女。2024年からは父の名を冠したMAX ORIDOレーシングチームに所属している。


「レースデビューは2021年のヤリスカップで、割と最近なんです。それまでカートとかも全く経験がなくて、普通自動車運転免許を取ってから車の楽しさに目覚めた感じです。J SPORTSオンデマンドで配信されているモータースポーツ情報番組の『MOTOR GAMES TV』の企画で、国内Aライセンスを持っていれば誰でもレースに参加できることを紹介する一環で、ヤリスカップに参戦することになって。それがきっかけでモータースポーツの世界に入りました。」


このときのレースには、茉彩選手にとってほろ苦い思い出がある。


「最初の公式練習でいきなりクラッシュをしたんです。それで恐怖心が芽生えてしまいました。でもだからと言ってレースをやりたくないとかはありませんでした。自分が実際にドライバーとして走る立場になって、チームの大切さとかレースは一人じゃできないんだということを、身をもって感じることができたことの方が大きくて。もっと速く走れるようになりたいという想いが強くなりましたね。」


KYOJO CUPへは2022年から参戦しているが、今年はチームMAX ORIDO VITAの代表としての「レースに参戦する」という意識に責任感が加わった。自身の基盤となるチームへの想いも自ずと強くなった。


「普段は父のガレージ(130R YOKOHAMA)に勤めているんですが、自分たちで購入したマシンをメカニックさんや他のスタッフさんとも協力しながら1台の車に仕上げてきました。ラッピングもチームでやったので、そんな時間を過ごす中で生まれた一体感が、また走るときのパワーになっています。」




SNSで発信しながら同世代にも
モータースポーツの裾野を広げたい





2世レーサーとしてその戦績は注目されるところだが、茉彩選手はスピードだけでないレースの面白さをチームMAX ORIDOから発信したいとも考えている。


MAX ORIDOはレースが好きでレースだけというチームではなくて。車好きな人が集まってレースに参戦するような感じです。ガッチガチでレースに臨むというより、チームみんなで楽しもうという姿勢が強いですね。もちろん速く走ることは前提として、車のことやレースのことをよく知らない層にも興味を持ってもらえるように、まずは自分たちがレースを楽しむ姿勢をお届けしたいです。コンセプトとしては“Enjoy!”という感じですね。」


学生時代をカナダで過ごし、ハイスクール卒業後は美容学校に進学。美容師国家資格を取得している。レーシングスーツを脱げば、Z世代らしいおしゃれや美容にも興味津々のお年頃だ。


「モータースポーツ界にはレース好きな女性はたくさんいますが、自分自身の周りを見ると、同世代の友だちには車に興味がない子がたくさんいるんですよね。だから、ファッションと融合しながら車そのものやレースの魅力をアピールできたら。自分が走っている姿とかSNSでポストすることで、サーキットへ足を運んでくれる人が増えたらいいなって思います。」


今のところ、フォロワーは男性多めだというがインフルエンサーとして幅広い世代にモータースポーツの裾野を広げたいと、茉彩選手。「カッコいい!」と思ってもらえるような存在を目指し、KYOJO CUPだけでない様々なカテゴリーにも挑んでいる。




レーサーとしての技術を磨き
去年よりも上の自分を目指す





2023年夏は全日本ラリー第6戦「ラリーカムイ」にスズキ・ジムニーでラリー競技にデビュー。XC-3クラスにエントリーし、クラス2位で完走を果たした。202472021日に行われたKYOJO CUPにおいては、第2戦こそ戦績は振るわなかったものの、翌日の第3戦では決勝17/29台をつけた。


「私はまだタイム的には遅くて全然トップ争いといったレベルにはまだ遠いんですけど、速く走れるようになっていろんなバトルができるようになったらと。そこでまた別のレースでの楽しさが味わえると思うんです。参戦する限りタイムはついてくるものですから、もっとアグレッシブに挑んで、今シーズンを終えたとき去年の自分よりも上のレベルにいきたいと思っています。」


タイムやスピード、テクニックといった課題はレーシングドライバーであれば永遠につきまとう。茉彩選手はレースを通してたくさんの経験を積みながら技術を磨き、自分らしいやり方でモータースポーツの魅力を伝え続ける。