INTERVIEW
Vol.5
佐々木藍咲
目標はニュルブルクリンク
24hレースでのクラス優勝
今年度は全戦ポイント獲得を目指し
ガツガツしたシーズンに
INTERVIEW
Vol.5
目標はニュルブルクリンク
24hレースでのクラス優勝
今年度は全戦ポイント獲得を目指し
ガツガツしたシーズンに
「今年はKYOJO CUP2年目の参戦になるので、去年よりもレベルアップした姿を見せられるよう頑張ります。ベテラン選手の方々とどういう戦いをしていこうかなと、すごく考えています。」
淀みのないハッキリとした口調が小気味いい。その宣言通り、佐々木藍咲選手(以下、藍咲選手)は2024年5月に行われた第1戦で予選6位、決勝5位と見事にシングルを飾った。
カートを始めたのは中学2年生、初めてのレース参戦は中学3年生からと決して早い方ではない。学生時代はむしろ部活動に主軸を置いていた。
「小学5年生のときクラブ活動でバレーボールと出合い、中学、高校と部活動で打ち込んでいました。スパイクから守備までなんでもこなして、スポーツ推薦入学した都立高校は、東京都ベスト8レベルで関東大会出場を視野に入れている強豪校でした。」
バレーボールに情熱を注ぐ一方で、藍咲選手はいつかレーシングドライバーになりたいという夢を持っていた。
「両親ともにサーキット走行が趣味で。父は車の板金塗装業を営んでいて、母も以前は旧車の販売ディーラーに勤めていたこともあり、生まれたときから車が身近にあった感じです。それでいつかはレースに出るという目標を持ち始めていました。でも、自動車免許を取ってからでいいかなと思っていたんですが、紹介されたカートショップで『本気でドライバーを目指すんだったら、カートをやらないとちょっと厳しいよ』と助言をいただいて。これはやらなきゃと、カートをやり始めました。」
実のところ、当時の藍咲選手はカートに対して抵抗感があった。
「まだ中学生だったので、スピードの速さや接触とかクラッシュに対して恐怖心がありました。親から『乗ってみれば』と言われて、勇気を出して乗ってみたら意外と楽しくて。でも、周りを見ると小学校低学年から乗っているような子たちばかりで、技術的に敵わないところがたくさんありました。上手くなるには練習を重ねて自分のセンスを磨くしかないと思って、時間を見つけてカート場に通いました。」
だが、中学生時代はスポーツ推薦を掴むために学業も部活動も疎かにできなかった。高校生になると、大会出場に向けて土日も練習試合の日々。カート練習の時間を捻出しようにも、思うようにはいかなかった。
「中学、高校はカートに専念すると部活動が疎かになってしまうので、両立が難しかったですね。高校のときはコロナウイルス感染症が拡大して部活動ができなくなって、時間ができたのでカート場に出かけていました。ですが、コロナ禍が明けてからは全く乗れなくて、部活動が休みになるテスト期間を狙ってカートに乗りに行っていました。」
2019年から3年間、サーキット秋ヶ瀬で開催されるCAカートレースに毎年出場。2022年にはAKIGASE-SSクラスで2位を獲得し、表彰台に上がった。しかし、3年間でカートレースは8戦ほどしか経験できず、ここに至るまでの結果も練習量も満足したことはなかった。藍咲選手はもっとカートに乗りたくて、部活をやめようかと思ったことも正直あったという。それでも悔しさや葛藤を精神面の修練につなげ、部活動では副キャプテンとして活躍し引退試合までをやりきった。
藍咲選手のレース活動を見守っていたカートショップの社長が、プロレーサーを目指す足がかりとして勧めてくれたのがKYOJO CUPだった。藍咲選手は部活動を引退後すぐに自動車免許を取得し、オーディションを受けて合格。高校を卒業すると同時にLGH Racing with YLT(以下、LGH)に所属した。LGHといえば、三浦愛選手、猪爪杏奈選手といったKYOJO CUPの歴代覇者を輩出したチームだ。大きなサポートを得て、2023年、KYOJO CUPに初参戦した。
「イコールコンディションのレースは、マシンの差がほとんどないので勝敗はドライバーの技術次第です。レベルの高い選手がたくさんいる中でどれだけ近づけるか。少しのチャンスを掴めるようにするには、経験値の差をどれだけ埋められるか。練習での反復がどれだけできるかでレースが決まるので、しっかり練習を積んでいきたいと思います。」
スポーツアスリートのような爽やかさの中に、静かにみなぎる闘志。2023年度の最高成績10位からすでに飛躍し、伸びしろも十分ある。「いつか、ドイツ西部の森の中で行われるニュルブルクリンク24時間耐久レースに出場したい。」と藍咲選手。大きな夢に近づくために、確実にトップを狙いにいく。