彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.6

佐藤こころ

誰にも負けない勇気と決断力で
新たなステージに挑む
16歳のKYOJO
最年少レーシングドライバー

佐藤こころ

カートレースのデビュー戦は5歳
最後まで諦めない姿勢が持ち味に


佐藤こころ選手(以下、こころ選手)は現役高校生。2024年度のKYOJO CUPにおける最年少ドライバーだ。申請許可が下りる16歳になるのを待ちわび、JAF公認カート競技で出場実績を満たすと取得できる限定Aライセンス(限定国内競技運転者許可証)を2023年に手に入れて、このステージへと上がってきた。


「私がカートを始めたのは4歳の頃です。両親ともロードレースの経験者で、ハイスピードでせめぎ合うモータースポーツが大好きで、私にカートを勧めてくれたのがはじまりでした。パソコン画面で見たカートレースは迫力満点で、幼心に『やってみたい!』と思ったことを覚えています。初めてカートに乗ったのは北神戸サーキットです。コースを走ってみたら動画で見るより何倍も楽しくて、毎週通っているうちに段々とのめり込んでいきました。」


才能は瞬く間に開花した。5歳で初めて参加したレース(SL宝塚シリーズキッズフレッシュマンクラス)で優勝を飾り、7歳になると同レースでチャンピオンを獲得。快進撃は止まることなく、その年にキッズ&ジュニアカートレース全国大会にも出場し2位になるなど、男女混合戦の中で表彰台の常連選手となった。

「カート場が家からすごく近かったこともあり、遊び場のようにして育ちました。一緒に競ってくれる友だちがいたのも大きいです。練習で抜き合いのバトルを繰り広げたり、タイムを出すために引っ張ったり引っ張ってもらったりして、カート場でフィジカルを鍛えていった感じです。」


たとえ表彰台に登ることができても2位なら負けだ。あの頃も今も、こころ選手は「勝ち」だけを見据える。





ジュニアカート選手権で偉業を達成
史上初の女性ドライバー優勝者に




12歳頃からはジュニアカートへとステップアップ。こころ選手は「レースでは最後まで諦めない」を信条に、強さに磨きをかけていく。そして2020年、JAFジュニアカート選手権FP-Jrクラス(以下、ジュニアカート選手権)において第3戦、第4戦と2連勝を果たした。こころ選手にとってのジュニア選手権初勝利であり、同大会にとっては史上初の女性ドライバーの優勝となった。向かうところ敵なしといった印象だが、決して力技で競ってきたわけではない。


20214月のジュニアカート選手権で第2戦を予選3位で迎えた決勝のとき、絶対勝ちたくて。何度も雨雲レーダーを見てメカニックさんと話し合い、1台、レインタイヤを選択することに決めたんです。でも、スタートはドライコンディションなのであっという間に最後尾になって、トップ集団からものすごく離されてしまいました。でも諦めずにレインタイヤの消耗を最小限に抑えることだけを考えて、走りに集中しました。そしたら予報通りに雨が降ってきて、結果的に優勝できました。」


14歳になった2022年からはJAF全日本カート選手権(以下、全日本カート選手権)のFP-3クラスで出場すると、四輪という次のステップが目の前に近づいてきた。




一度は諦めかけた目標を成就させ
「昨日の自分より速く」成長し続ける




四輪レースに出場するとなると、車両代や車両の整備費、搬送料等、それなりに初期費用がかかる。前だけを見つめてきたこころ選手に暗雲が立ち込めた。


「費用的なことが問題になって、やはり四輪は手が届かない存在かなと諦めかけていた時期がありました。ですがスポンサーさんが後押ししてくださって、2023年に全日本カート選手権FS-125クラスに参戦することができて。それでシリーズランキング5位になったことで限定Aライセンスが取得できました。」


晴れて四輪の世界の入り口に立ったこころ選手は次なる舞台としてKYOJO CUPを選んだ。


VITAは初めてなので、まずは慣れるところから。カートはタイヤがグリップするのでハンドルを切るとすぐ地面に吸い付いていくような感覚ですが、VITAはハンドルを切ってから長いというか、反応スピードがカートに比べるとだいぶ遅いように感じます。操作が難しんですけど、それさえも今は楽しいです!カートでレースをしていた頃はただ勝ちたい思いでいっぱいでしたが、良い結果を出すことで家族やスポンサーさんに少しでも恩返しがしたいです。今シーズンでしっかり結果を残して、来年再来年と続けていけるレースをしたいです。」


夢はスーパーフォーミュラへの出場だ。


「正直、女性レーサーでは難しいカテゴリーかなと思っていたんですけど、juju(野田樹潤)選手が実際に果たしてくれたから希望の光が射しました。いつかそのステージに行けるよう、挑戦を恐れず常に最善を尽くして、自分を超えていきたいです。」