INTERVIEW
Vol.7
永井歩夢
大切なのは今ある環境で
どう結果を残していくか
結果を出せば、目指す先は
おのずとついてくる
INTERVIEW
Vol.7
大切なのは今ある環境で
どう結果を残していくか
結果を出せば、目指す先は
おのずとついてくる
KYOJO CUPに参戦する女性レーシングドライバーたちのキャリアは多種多様だが、永井歩夢選手(以下歩夢選手)もその一人といえる。幼い頃からオフロードでのモトクロス競技に取り組み、高校1年生で出場した全日本選手権レディースクラスでは3位に入賞。16年間、情熱を傾け続けた二輪から心機一転、2019年にゼロから四輪をスタートした。
「両親も姉もモトクロス競技をやっていて、私も3歳からバイクにまたがっていました。プロを目指していましたが二輪では叶わなくて。それでもモータースポーツを続けたい気持ちがあって、進む道を模索していたとき、地元の三重県四日市市でラリーのドライバーオーディションがあると知って受けてみたんです。そこで合格したことから、四輪の世界へ入りました。」
ラリーは公道が舞台のモータースポーツ。舗装がされていない路面で争われる種目もあり、歩夢選手はその競技に親近感を抱いた。2020年に国内におけるラリー競技の最高峰「全日本ラリー選手権」にチャレンジし、JN6クラスでシーズンランク5位を飾った。
「ラリーとモトクロスは乗り物的には全く別物ですが、ラリーの選手がトレーニングでモトクロスをしたりするくらい、結構近しい存在だったので入りやすいというのもありました。技術は全然ありませんでしたが、競技に対する抵抗も全然なくて。家族も四輪は好きなので、転向後も変わらず応援してくれています。」
初戦の学びと経験を強さに変えていく
ラリーに挑む中で女性レーシングドライバーだけのレースがあると聞き、オーディションを経て2021年にKYOJO CUPに初エントリー。
「交代制ではないスプリントレースは初めてで焦りました。VITAの車体に慣れていなかったこともあって、プレッシャーもすごくて。レース直前ならではの周りの殺気立った雰囲気にも怯(ひる)みそうになりながらマシンに乗り込んだものの、VITAを操れている自信がないまま出走したので、気がついたときはいっぱいいっぱいになっちゃって。それでマシントラブルを起こしてリタイヤしました。スタート直後の熱気にやられちゃったというか、冷静になれなかった自分がいたのかもしれません。それでも何とか今年もチーム(BBS VITA)に拾っていただいて、こうして出場できることがありがたいです。」
初戦での悔しさが今の糧になっているかと尋ねると、歩夢選手は「忘れちゃいました!毎回、落ち着いて乗ろうとは思っています。」と答えて、いたずらっぽく微笑んだ。ほろ苦いデビュー戦となったが、リタイヤの原因は100%自分にあると自己分析し、次のレースへとつなげたのだろう。2023年度の最終戦(2023年11月26日開催)ではトップ争いに食い込み、KYOJO CUP3年目にして3位入賞を果たした。
「速くなりたい」という思いは常にある。それでもモトクロスに取り組んできた頃のように練習できないことが、歩夢選手にとってのジレンマだ。
「四輪に転向してから、トレーニングは有酸素運動から筋力トレーニングに変えたり、方向性を調整していきました。でも走行練習は1ヶ月に1回乗れたらいいほうで。2〜3ヶ月に1回しか乗れないときもあり、練習したくても練習できないことが最初の頃は本当にストレスでした。それこそモトクロスバイクに乗っていた頃は、毎週末、オフロードコースで走っていたので。家族全員が同じ競技に取り組んでいたことも含めて、自分はつくづく恵まれた環境にいたんだなぁと思います。」
壁にぶつかることで過去を省み、“当たり前”の有り難みという気づきを得た。歩夢選手はできないことを数えるより、思い通りにならないからこそ「今、何ができるか」にフォーカスするようになった。
「振り返ってみると、毎週乗れていた頃はないがしろにしていた部分が少なからずあったと思うんです。今は乗れる回数が限られている分、やりたいことは一つひとつ確実にクリアできるよう、練習課題はどんどんまとめてその日に集中させる。やっぱり年齢も上がってきたので、頭でなるべく考えて効率よく練習していこうと意識を変えました。」
今年でKYOJO CUP参戦4年目。目標は敢えて定めないのが歩夢選手のスタンスだ。ポーカーフェイスだがグリッドに並ぶたび緊張で手が震えるという。
「小さいときからこればっかりは変わらなくて(笑)。いい緊張感だと前向きに捉えています。
技術的に上手くなって、今ある環境で結果を残していきたい。結果を出せば、その先はおのずとついてくるかなと思います。」