彼女の素顔

INTERVIEW

Vol.9

清水愛

カーレースが題材の
アニメの世界とオーバーラップ
プレッシャーも力に
モータースポーツを盛り上げていく

清水愛

短距離走で養った不屈の精神が
コンマ1秒を競うレースに生かされて


他のレースと同様、KYOJO CUPにもさまざまなレーシングチームが参戦している。企業名を冠したチームが多い中、清水愛選手(以下、愛選手)が所属する「ハイスピードエトワールR VITA」はテレビアニメとコラボレーション(以下、コラボ)した異色のチーム。20244月に正式に発足したばかりで、モータースポーツ界のみならずアニメ界もその動向に注目している。


「公式レースはKYOJO CUPが初めてです。自分のトヨタの86で草レースに出たことがあるくらい。」

人懐っこい笑顔でそう話す、愛選手。学生の頃に見たアメリカのSFアクション映画『トランスフォーマー』でカマロをはじめとしたアメ車に魅了され、車好きになった。その後、ガソリンスタンドでアルバイトをするうち、国産車にも興味が湧いたという。


「自分の車を買おうとなったとき、カマロやRX-7、スープラが候補に上がったんです。最終的には新車で購入できて維持が続けていけそうで、なおかつ走る楽しさがありそうなFR車に絞って、86を購入しました!  それからGRガレージでレカロのバゲットシートを手に入れたのをきっかけにサーキットに誘われ、どんどん沼へハマっていきました(笑)


実際、サーキットは単なる走行の楽しさだけではない魅力にあふれていた。

「学生の頃、陸上部で100m走、200m走、ハードルといった短距離走をやっていました。いわゆるショートスプリントは0.01秒を競い合う世界で、わずかなミスが結果に影響してしまうんです。サーキットに出たら陸上部時代のタイムトライアルが蘇ってきたのか、タイムに対するこだわりや負けず嫌いな性格に火がつきました。」





アニメ『HIGH SPEED Etoile』と
コラボしたチームの女性レーサーに抜擢




86での草レースをきっかけに、愛選手の女性レーシングドライバーへの道が加速する。女性の車愛好家が集まるSNSを通して、新しく女性レーシングチームが発足すること、そのためのオーディションが行われることを知った。

4050人が入っているグループLINEで、その情報に反応したのが私だけだったみたいで。新たなレーシングチームはアニメとコラボすると聞いて、私はアニメオタクでもあるので好奇心をそそられてオーディションに参加することにしたんです。それが2024年年明け早々に行われ、1月末には合格の知らせが届きました!  トントン拍子で運が良かったといえばそれまでなんですけど、運も実力のうちだと信じてこの流れに乗ろうと思いました。」


愛選手が参加したオーディションは、女性レーシングカードライバーの育成とサポートを目指すプラチナムファクトリーという企業が実施したもの。カーレースを題材としたテレビアニメ『HIGH SPEED Etoile』(20244月〜毎日放送等で放映中)とコラボし、レーシングチームを発足したのは前述の通りだ。


「アニメ『HIGH SPEED Etoile』は、近未来を舞台にした次世代レースで最高時速500kmオーバーで競争が繰り広げられる物語です。主人公の女の子がレース未経験で、ちょっと自分とシンクロするところもあって。なので、その主人公の輪堂凛ちゃんと一緒に成長していけたらなって思っています。」




KYOJO CUPで結果を出すことで
アニメファンにもレースの裾野を広げたい




レーシングチーム「ハイスピードエトワールR VITA」は、まだまだ女性の活躍する機会が少ないモータースポーツの分野を応援するために結成された。その背景や想いは、KYOJO CUPと重なるところだ。余談ではあるが、チームを率いる総監督は2023年にGT300クラスでシリーズチャンピオンを獲得するなど、スーパーGTで活躍中の現役レーシングドライバー・川合孝汰氏。同じくKYOJO CUPに参戦する前田琴未選手がチームメイトであり、勝つための布陣が揃っている。


「レーシングドライバーとして初めてのシーズン、いろいろな人との関わりを大事にしながら、まずはKYOJO CUPでシングルを狙っていきたいです!お尻の方を走って満足していてはダメなんで、出るからには一戦一戦、目標を立ててステップアップしたいですね。とにかく今は練習あるのみです!」


女性レーシングドライバーとして、チームの看板も背負う愛選手。

「アニメというエンターテンメントをきっかけに、これまでモータースポーツに興味やご縁がなかったアニメファンの方々にもレースを知ってもらえたら。リアルのレースで私が活躍することで、サーキットで観戦するファンが増えていったらと思います。」


リアルとアニメ。どちらのレースも、目が離せないような熱いバトルに期待したい。